思い込み。

 

仕事で建物の管理をしている。

管理物件には築の古いものが多くて、色々なトラブルが起こる。

小規模の建物ではよくあることだが、定期のメンテナンスをしない。

つまり起こる事故に対して、場当たり的に対処をする。

本来は修繕計画を策定し、積立金から計画的に支出するのが理想的。

しかし、現実はそうならない。

 

頻発するのが漏水だ。

エアコンのドレン水、給水管、排水管。

厨房の防水切れ、そして雨漏り。

これらの原因を調べて、家主負担、テナント負担をジャッジする。

その裁定に納得してもらえるように、調査は正確さを要求される。

 

しかし、厨房の床の中で起こる水漏れを正確に把握したり、

複数のテナントが絡む事象を解析するのは相当難しい。

問題の切り分けが大事。

天候との関連性から、雨水とそれ以外に切り分ける。

室内なら漏れ時間や休業日との相関関係を見る。

そうすることで、およそ給水か排水かエアコンのドレンかが

見えてくる。

 

こうして書くと簡単に原因追及できそうだが、なかなか難しい案件も多い。

多くの事例で問題を複雑化させ、原因を見えなくさせるのが”思い込み”だ。

給排水の専門家や、内装の仕事に携わっている方は特にその思い込みが激しい。

プロ意識が余計に目を曇らせる。

 

今見えている事象や調査時のデータを無視して自分のストーリーに当てはめようとする。

こちらが、そのストーリーはこの点で違うのではないかと進言しても、既にその方の

頭の中に強固なストーリーが出来上がっているために聞き入れて頂ける事が難しい。

 

一旦ストーリーが固定されると、確実にそのストーリーの矛盾が証明されない限り

そのストーリーに拘泥し、その他の事実を何らかの理由を付け否定をする。

そして、問題解決への道は遠のくのだ。

 

過去に職人の書くストーリーの間違いの為にかなりの苦労をしてきた。

また、自分自身も過去には多くの思い込みからくる、間違いを経験してきた。

だから今は現場に立つときは一切の思い込みを排除し、冷静にあらゆる可能性を

考慮し問題解決に当たるようにしている。

 

調査の途中で自分の思い込みがあると、ある者を漏水の犯人と仮定することになり

そこには、犯人に対する態度がどうしてもにじみ出てくる。

その後の調査で、原因が別にあると分かった時の罰の悪さは筆舌に尽くしがたい。

冤罪事件だから。

 

思い込みでモノを言ってはいけない。

証拠もないのに誰かを悪く言ってはいけない。

ちゃんとした情報に基づき、原因を追究し改善する。

基本的な行動として肝に銘じている。