究極の鋸に見る精度感

 

ストラディバリは300年以上前のイタリアの弦楽器製作者。

彼の作品ストラディバリウスと言えばは誰でも知ってるだろう。

その最高峰と言われる音色を手に入れるには少なくとも

億の単位の資金が必要となるようだ。

オーケストラと聞くと眠くなる私のようなタイプには無縁だが。

 

先日何気なくTVを見ていると、ストラディバリウスを修理する

イタリアの工房で日本の鋸(のこぎり)が使われていることを知る。

億単位の物を加工する訳だから、職人は道具に拘る。

切れない道具、使いにくい道具では直すどころか別の部分を

壊してしまうことも有るだろう。

 

その鋸は新潟県長岡市中長鋸製販で制作されている。

イタリアの職人に、これが無いと仕事ができないと思わせる

超極薄の刃は0.25㎜で、新聞紙にして3枚分の厚さだ。

 

TVではストラディバリウスに、極薄歯の鋸を入れるシーンが

写っていたが、相手は億単位の貴重な楽器だ、相当な緊張が

伝わってきた。失敗は許されない。

職人が最高の道具を求めるのは当然の事だ。

 

鋸の制作場面も放映された。

何年たっても新品同様の切れ味を維持するとイタリア職人に

言わせしめる鋸は、もとは鉄の板だ。

鉄の板を焼いたり、急激に冷やしたり、歯を立てたりし

相当な時間と技術をつぎ込み、仕上げられる。

美しくも機能的な道具。

素晴らしい精度感だ。

精度感…

 

精度感を高めている。自転車の話しだ。

精度感と言う言葉の使い方が、合っているのか

間違っているのかは置いておいて欲しい。

心の中に出てきた表現だ。

 

自転車競技においての精度感とは何を示すのか?

それは、走り方、機材、食事、練習方法、考え方・・・

自転車競技に係る全て。

 

とっても残念で嬉しい事に今月50歳になる。

無事ここまで生きてこられたことに感謝だ。

感謝はするが、一競技者として考えれば年齢は残酷だ。

年々ベースは落ちて行き、疲労は蓄積する。

前年と同じだけ走れると言う事は、強くなると言う事。

普通にやれば年々弱くなる。

 

精度感を高める。

若いときはただ走ってるだけで強くなる。

歳をとればただ走っていれば疲れるだけ。

時間だって若者の様には無い。

限られた時間、限られた体力の中で如何にして

強くなるか・・・

 

自分に何が必要か、どんな練習が必要かを常に考える。

睡眠時間の確保、食事の検討。

ウエイトコントロール。サプリの摂取。

適切な機材を選び、適切な試合に出場する。

試合での走行位置や走りのマネジメント。

何度もアタックし、数撃てば当たると言うような

走りは、憧れはしても絶対できない。

 

ありとあらゆる、成績に関連する事の精度を高める。

色々と失敗したり、故障したり、効果の薄い練習を

している体力も時間もない。

極端に言えば、試合に向けて取る行動の全てが

表彰台の方向を正確に向いているイメージだ。

 

今の私の状況は刃物に例えれば、研ぎの段階だ。

もう、根本的には強くはならない。

絶対的な強さは20代がピークだ。

しかし、全ての精度を上げて戦えばもう少し頑張れるだろう。

 

精度感を上げて明日も朝練。

共に走る選手なら何かを吸収できるはずだ。

自転車競技者の「脚は口ほどにものをいう」はずだから。