自転車競技との出会い 変革期

就職の面接はミナミの鳥料理専門店でゆるい感じで行われた。

面接官は創業一族で専務兼監督兼選手の恩師。

採用にあたっての会社からの条件はなんと!

選手をする事と朝練をすること。

私をビビらせようとしたのだろうが、こちらとしては願ったり、叶ったり。

いくら練習が厳しいとか、すごい話でビビらせようとしても、私は目が輝くだけ。

で、焼鳥食べてビールを飲みながらの面接は無事合格となった。

 

卒業して2年目の春、当時持っていた車(不要なのですぐ売却)で家財道具を運び込む。

寮は工場内にあり、風呂付、3食付きなので、食べる心配なし。

職場まで30秒。

自転車乗って、仕事してたら1円も使わない環境。

周辺は車も多く、練習環境は極上とは言えないが、ぜいたくは言えない。

 

朝練は5時起きで5時半出発、東大阪若江岩田から八尾の山本を通り国豊橋から25号線を

経由して王寺から東生駒を抜け、最後は阪奈道路を通って王将あたりで千切りあいをして

頂上ゴール。

計測区間で50分ほどだったと思うが、計測区間の8割ぐらいが全開なので、結構な負荷。

ここを、監督がツキイチで私達が前を走る(今私がやってるやつ)。

レースでツキイチされるとむかつくが、監督のツキイチには感謝していた。

競技者であり、監督であり、上司でもある大先輩の前でおかしな走りは出来ない。

いつも、そのプレッシャーを背中に、出せる力の全てで誠心誠意走るようにしていた。

後ろにいると前を走る選手の微妙な変化・・・気持ちの変化まで伝わってくから。

 

阪奈道路を下り、外環を通り会社へ戻る。

すぐに着替えて、朝ご飯を食べて部屋で一瞬休んで、仕事開始。

仕事はフレーム溶接、当時はマウンテンバイクとかが多かった。

残業はほとんどなく、夕方時間が有れば十三峠なんかにも、よく出没してたな。

そして、寮の風呂に入り、寮の晩御飯を食べ9時台には寝る生活。

部屋にテレビないし、インターネットもパソコンも携帯もなかった。

至ってシンプル。

週末は隔週で土曜日が休みだったと思う。

週末は決まりのように長距離。信楽方面が定番だった。

 

しかし、どこが強くなった理由なのか・・・。

一、朝練の定例化(定型化)と限られた時間で全開を出す練習の合理性。

一、後から監督に見られていることによる、偽りの限界でない限界の世界へ突入したこと。

一、練習コースが秀逸(前半平地)、最後は頂上ゴール。

一、朝練のメンバー構成の妙

ここらあたりが考えられるが、中でも朝練メンバーの要素が大きかった。

時期により参加者は変遷していったが、まず監督の存在は大きかった(感謝しております)。

そして、同室のK味さん、この先輩も速かったし、桑原の朝練で確実に花開いた。

ピストの試合でシマノ、サンツアーに交じって入賞を果たしていた。

後輩のN尾、OO土井、U坂とかも頑張っていたな。

近くにあった自転車の部品会社Y貝のプロチームから現岡山のWAVE店長の藤原。

この後輩藤原は高体連からのたたき上げで、ピストを経験しているのでキレがいのに

コクが有る(登りも強いってことです)。

ちょっとでもこちらの状況が悪いと喰われる感じがあり、いつも彼の重圧を感じ走ってきた。

同じくY貝のS永さん、M成さん、Tノ内さん。ここらが常連メンバー、流石に企業のウエアを

着ている選手たちで、みんなそれぞれに一芸ある曲者で良い刺激を与えてくれた。

スポットでは後にシマノへ行くことになる山本君(当時高校生)なんかも来てくれたな。

週末はもっと多彩で、私が実業団で入賞するようになると交友が広まり、サンツアーのH田先輩、

鳥屋尾、アラヤからは園田君、成田君(カツリーズ代表)なんかも来てくれたな。

ときには、こちらから出向いてサンツアーの泣く子も黙る、高橋大先輩(現日本チーム監督)と

もよく練習をした。

こういった、競技者としての強い意志を持つ、強いメンバーと走れる環境が、整ってきた事、

これが大きかった。

 

話は前後するが、高校卒業後の二年間は実業団レースでの入賞は無かった。

ただ漫然と無計画に走っていただけ。しんどければそれで強くなると。

そして桑原の入社は3月中旬。

迎えた6月に行われた近畿ロード(現P)で当時の競技界を代表する面々に交じり入賞を果たす。

前後の入賞者はスギノ、シマノ、サンツアーなどの有名どころで、無名の輩が間違って入る隙がない大会。

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自分自身も逃げている時に違和感があったのを覚えている。

”ここは私の居ていい世界なのか?” ”きっともうすぐ千切られるんだろう”と。

1か月後の西日本実業団ロードも連続入賞した。

3月の入社からわずか4か月。

4か月あれば、人は変われる。

強くなるのにある程度のベースが有れば何年もの月日は不要だと思う。

朝練は週に3度ほど計測区間で50分。週末は150キロほど。

ある意味、誰でもやれる内容だし、やっている人も多いと思う。

やはり中身が大事、練習の強度配分、継続性、意識が重要と今更ながら感じている。

 

ちゃんとした練習記録と、それに基づく考察。

決めたことをやる実行力と継続性。

練習に取り組む意識の改革。

今日の練習の意味を考える走る。

 

同じ距離を走っても、同じコースを走っても練習効果は全く違うと思う。

少ない時間で結果を残す。

私達には毎日、6時間の練習時間は無いのだから。