西チャレ・・・再び

 

全ての事象が最終的に一点に収束する。

バラバラだった色々な要素が、その一点に向けて

混じり合い、溶け合いながら意味を持ちだす。

毎年のことだが、シーズンオフが来ると、もう実業団レースは

辞めようかなと思いを巡らせる。

流石に体がきついし、仕事との絡みや人生のバランスとして

本格的にレースに傾倒するのは、思うところがあるからだ。

もちろん、落車の恐怖はいつも胸の底にある。

が・・・中毒患者のように気が付けばシーズンイン。

 

西日本チャレンジロードに参加してきた。

今年も登録者マスターズのカテゴリーに出場した(35歳以上)。

去年はE-1レースで入賞もしているのだから、エリートカテゴリーかとも

思うのだが、世界を狙う若者や傭兵部隊の外人と戦うのは流石につらい、

間違っても勝てない、着に絡めないカテゴリーで走るのは、

精神的にとても耐えられないし、そもそも50歳を超える年齢は

立派な中高年だから相応と言えば相応なカテゴリーだろう。

 

レースは広島空港の周りに作られた自転車専用のサーキットコース

1周12キロを3周する。

路面は数年前に完全に補修された。

以前はパンクしやすく、滑りやすい路面だったが、現在は雨でも滑らず、

パンクの無い非常に快適な路面に生まれ変わっている。

公道では実現できない速度とバンク角でグネグネと上下しながら進むコースだ。

登りはあるが、長くなく下りは直線的でスピードが乗る。

勝負所のゴール前は短い急坂を登った後、緩いのぼり勾配となっている。

レイアウト的に本格的なクライマーより登れるスプリンターが活躍できるコースだ。

かといって、登れないと千切れてゴール勝負にも絡めないわけだが…

 

昨年、優勝させてもらったので、2連覇がかかった試合だ。

勝っても負けても趣味の範疇であり、プロでもないので『また頑張ろう』で

いいのだが、やはり2連覇を意識してしまい、相当入れ込んで試合に臨んだ。

 

今だから言える作戦・・・

それは”逃げを許さず、ゴールまで持ち込む”それだけ。

できれば、自分が残れる最大の強度になってくれればいい。

その強度で、ちょっと登れるスプリンターが遅れればラッキーだからだ。

遅れなくても、足が削られればまともなスプリントが出来なくなる。

それは自分にも当てはまる諸刃の刃でもあるのだが。

 

逃げは基本的に難しいコース。

”おいしい話しには乗りたいけど、リスクのあることはしたくない”という

我々おじさんのカテゴリーでは尚更決まりにくい。

人生の機微、酸いも甘いも噛み分けることを知っている年齢なのだ(笑)

だが、その中にも勇敢な選手はいるので、集団に追わせるのか、自力で追うのか

自分も逃げに加わるのかの選択をその都度繰り返す。

 

途中で発生した二人の勇敢な逃げには一気に追いつきに行き、交代拒否で対処する。

勇敢な選手と逃げの至福の時を共にしたいが、これも勝つための作業の一環だ。

理由は、前年優勝していることで私はマークがきつく、後続は私が入っている逃げを

容認しない可能性が高いこと。

そして、逃げて勝つ確率とスプリントに持ち込み勝つ確立を天秤にかけたときに

スプリントでの確率が高いと判断したからだ。

昨年逃げて捕まり、その後回復に苦労し、スプリントで苦心した経験が脳裏にあったと

言うのも実のところだ。

 

更に判断を要したのが、最終回の吉田選手(2位)の強烈なアタックだ。

これは吉田選手が狙ったのか、自然とそうなったのかはわからないが

私が先頭を引き、少し後ろに回った瞬間に逆サイドから、登り返しをタイヤが

音を立てるほどもがいて一気に差を広げた。

これは最終回だけに相当焦ったが、如何せん選手が前と横に被っているので

見送ってしまい、選択肢は自力でブリッジをかけるか、集団で追う2択となった。

ブリッジは最終回だけに集団も許さないので、集団での追走を選択する。

ここで、焦って引きまくると、ゴールで勝てないし、かといっていくら脚を溜めても

逃げ切られては、意味がない。

結果は少しペースの上がった集団を少しリードしながら、裏の平地区間

無事捕らえることが出来た。

 

一団となった集団は最終の三段坂へと入っていく。

昨年は2段目の池の横で島根の選手の強烈なアタックがあり、その対処に

かなり脚を使わされ、苦労したので、不意のアタックに注意しながら積極的に

先頭付近で上げていく。ベースが速ければアタックは出来ないものだ。

 

スプリントが苦手なヒルクライマータイプの選手が最後の力を

ふり絞り三段坂を駆け上がるが、最終回の三段坂はもう

パンチャーの領域なので別脚を使ってでもクリアさせてもらう。

 

三段坂の頂上を先頭付近で余裕を残してクリアする。

落ち着いて一度後ろを振り返り、人数と面子を確認する。

人数は解らないが、沢山いるということはわかった。

後は力を使わず、ちょろ逃げを許さず、ポジションを落とさず

下りをこなし最終コーナーに向かわなければならない。

 

2番手でゴールに向かい下っていると、下りの登り返して前で、

右側に空いたイン側ラインから一人前に上がってくる。

これは想定内というか待ち人なので、タイミングよく乗り換えてまた2番手に。

そのまま最終コーナーへ向かうと、イン側に最終コーナーを使って

一気に前に出る選手が視界の隅に入った。

立ち上がりでもがくその選手の後ろを取りまた二番手へ。

急坂の半ばで、吉田選手が猛然とダンシングして上げるので

またその後ろに切り替えて2番手へ。

 

吉田選手は振り返らず、後は最後までもがき切るつもりらしい。

かなりいいスピードなので、申し訳ないが自分の距離(ゴールまでの)に

なるまでリードアウトに使わせていただく(吉田さんすいません!)

当然、その途中で上がってくる選手がいないか全身のセンサーを使って

注意を怠らない。

10308894_938928099517462_5069303596144996460_n 赤い選手は別カテゴリー

 

自分の距離でなくても、スプリントをかけられれば合わせて踏まなければ、

踏み遅れれば致命傷となるからだ。

スト200mくらい?で、いい距離になったと判断し、スプリント開始。

今年は途中冒険もせず、完全な状態でスプリントに入ったため、

脚も残っていて、バクバク、踏み踏みにもならず、しっかり踏み切ってゴールできた。

734350_938928196184119_4772115887873048862_n 二連覇なんで指は2本

 

今回は勝ちを意識し、クレーバーに展開させてもらった。

決して挑戦的な攻めの走りではなかったが、それは脚質的なものもあり、

勝利の確実性を追い求めた結果の走りだ。

 

仕事の飲み会を『今からまだ仕事なんです』と断り、小学生のような時間に眠りにつき、

早朝の暗い氷点下の北摂山地をボトルの水を凍らせながら走り、アルコールを抑え

食事を制限し、体重を管理し、水曜に高強度を入れ、以降疲れを抜く・・・

前日の食事も気を使い、機材の整備、積み込み・・・

全ての事象を試合に向けて整える。

そのうえでの勝利。

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同じ朝練メンバーののいちゃんがトラック(表彰台)に初めて乗った。

本人の喜びもさることながら、一緒に涎を垂れる仲だから私もとりわけ

感慨深い。これをステップにこれから沢山の賞状を集めてほしい。

惜しくも着は逃したが、イシトモ君のキリエンカを彷彿とさせる漢引きは

全選手の中でも突出していたし、彼が上げる登りでの高強度が

各選手の脚を削り、私の勝ちに有利に働いたことは特筆しておく。

 

勝って言う事はた易いのかもしれない。

後出しじゃんけんなのかもしれないが、勝つこと、入賞すること、

結果を出すこととはこういうことだと思う。

具体的な目標を設定し、そのために必要な作業をする。

食事、練習、睡眠、機材・・・すべての事象を試合に向けて徐々に徐々に

精度を高めていき、試合のその日にそのすべてが一点に収束する感覚。

1910409_938928329517439_7720316735080704726_n 共に朝練し、共に戦った仲間と喜びを分かち合う、応援団も一緒に!

 

月曜日、火曜日は練習もせず久々にゆっくり過ごさせてもらった。

さて、そろそろ次の試合に向けてばらついた事象を一点に向ける作業を

開始しなければならない。狙う試合があれば終わりはない。