リスクと勝利への欲求の狭間で揺れる

凄いニュースを耳にした。

関西国際空港を離陸した飛行機から外装のパネルが

剥がれ職場近くの西天満国道1号線で信号待ちを

していた車の上に落下したらしい。

https://www.sanin-chuo.co.jp/www/contents/1506222451230/index.html

上空3000Mからの落下物、当たり所が悪ければ即死だな。

おちおち外も歩けない。

 しかし、よく考えてみれば外にいて、飛行機からの

落下物に当たって死ぬ確率はどのぐらいあるのか。

統計学は門外漢だがおそらくロト6に当たる確率より低いだろう。

飛行機からの落下物を恐れて外を歩かない人はいないだろう。

電車の事故で人が亡くなることも少なからずあるが、

事故を恐れて電車に乗らない人もいないだろう。

 

すべからく、人のリスク管理は安全とリスクのバランスによって

成り立っている。

外に出れば空から物が落ちてくるリスクがあり、交通機関

乗ればさらにリスクは高まるが、人は車に乗り、飛行機で

海外へ向かう。

それは時間の節約であり、徒歩ではいけない場所に行くことが

でき、見れないものを見ることが出来るメリットがリスクを

上回るからだ。

完全にリスクを排除したければ、じっと家にいるしかない。

 

台風の影響での雨の中、山口県で行われた秋吉台カルスト

ロードレースに出場した。

完全ウエットの路面状態でのロードレースは落車のリスクが

高く、スタート前からテンションが上がらない。

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 このレースは約29Kmのコースを二周するのだが、コースの

途中には激坂とその反対の激下りがある。

勝負を分けるのは激坂であるのは当然だが、意外に激下りも

勝負のポイントなったのではないか。

 

自分自身は下りの入りは少し出遅れて30番手位で下り始めたのだが

下り途中のカーブ手前の直線部分で10人ほどをさっとパスし、下り

直後の激坂へは5番手程度のポジションで入ることが出来た。

その後の長い登りに能力的に対応できずに、ズルズルとポジションを

落とし、結局は完走のみという冴えない成績に終わったがレースの

運びには間違いがなく、登りの入りで先頭付近に位置すると言う、

クリアしなければならない課題をこなせたことは良かったと思う。

レース後にサイコンを確認すると、雨の中ビビりながら下っているのに

Maxスピードは80Km/hとなっていた、晴れていたら90Km/hは出てる

だろう。

 

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ロードのタイヤは非力な人間のパワーを効率よく生かすために、非常に

細く、ウエット路面でのグリップは弱く、コントロール性は皆無に

等しい。一旦コーナーで滑れば何のコントロールもできずに一気に

飛んでいくのがロードのタイヤだ。

 

80Km/hのウエットの下りにリスクがないわけがない。

勝利への拘りとリスクとの拮抗。

安全は確保したい。しかし、自転車という運動体が坂を下れば、

速度が上がれば上がるほどリスクは高まる。ましてやウエット路面で

あり前走者の跳ね上げる道路からのしぶきで、視界も悪い。

レースにおいても”安全が第一”確かに一面はそうだ。正論だ。

だが100%の安全を確保したければ、レースには出られない。

自爆、巻き込まれ・・・どれだけ気を付けても一般に容認されている

事故の確率とは文字通り、桁が違う。

 

選手は落車すればレースをダメにし、機材を壊し、その上身体を

痛める。月曜の仕事に就けないというのも相当のリスクだ。

しかし、集団はそのリスクを相当飲み込んで、坂を下っていくのだから

まともにリスクをリスクとして捉えたり、危険を直視してしまうと

レースは成り立たない。

 

勝利への欲求が・・・渇望がリスクの評価を狂わせ集団で雨の中を

車間も取らずに疾走するのがロードレース。

安全確保と勝利への欲求のバランスはそれぞれの選手の中にある。

どのような評価もポジションも尊重したいが、目に入る所での落車は

ご遠慮願いたいものだ。

落車を見ればその恐怖は染みのように心の中で静かに広がり、

私の中のリスクと勝利への欲求のバランスを静かに静かに壊すから。