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選手が主役

この時期、国内、海外のプロ選手の移籍のニュースがネット上を飛び回る。

海外のプロは、ダメならすぐに移籍か引退が普通。

今も昔も変わらない、厳しいプロの世界。

一方、自分が現役時代、エリートチームの国内選手は自転車会社や、部品会社に

就職しているのが一般的で、形式的には一般社員と同じ雇用形態。

よって、現役の間を通じて、同一チームと言うのも、そう珍しい事ではなかったし、

自転車を降りてからも、一般社員として働くと言うのもごく普通の話だった。

ところが時代が変わり、日本の企業は自転車選手を通常の雇用で雇う事を止めた。

自転車の選手に、引退後に会社で働いて欲しい訳ではなく、自転車の試合で成績を

出してくれればいい。

広告媒体として機能すれば良いのだ。

 

つまり、気軽に契約で選手になってもらい、年次の更新が出来なければそれでお終い。

選手にとっては、プロへのハードルは低くなったが、引退後の地位は不安定になった。

ましてや、長く選手を続けて年齢が上がれば上がるほど引退後の生活設計が困難に

なるのは想像に易い。

強く有名な選手であれば、仕事もあるが、そうでない場合は再就職には相当な苦労が伴う。

 

自転車選手から一般サラリーマン。

実は私も苦労した。

勉強もろくにせずに、自転車ばかり乗っていた男が27歳で一般企業に就職。

電話の受け答えから、社会人としての一般常識まで、知らないことだらけ。

選手としてのプライドが心の底にあるから、たちが悪い。

相当苦労したなぁ、あの1年目は。

 

話しは戻るが、そういった契約選手が主流になると、移籍や、解雇のスピードが速まる。

選手によっては、1年おきにチームが変わると言う状況になるのだが、そこはより良き環境を

求める選手と、より広告媒体として機能してくれる選手を探している、プロとプロの世界だから

私達がどうこう言う事でもない。

 

私自身は、基本的にチームを移ることには、あまり積極的ではなかった。

生活が変わり、ガタガタするのが嫌だったのと、やはりお世話になった方々に対して

申し訳ない気がしたから。

しかしながら、選手の本分は強くなり、成績をあげる事なので、その過程で真に移籍が必要であるならば

迷うことなく、移籍をすればよいと思うし、実際、自分もクワハラ、メンドリシオ、サンツアーと最小限では

あるが移籍をしてきた。

 

ここまでは、プロの話で、クラブチームの移籍はもっと気軽に考えてもいいと思う。

楽しくない、強くなれないチームに縛られる必要は無い、所詮は趣味の世界なのだから。

しかし、プロであってもクラブチームであっても、一番重要な事は、自分の人生として

”最良の選択をした”と言う感覚。

競技をする以上、後になって、ああすれば良かった、こうすれば良かったでは、泣くに泣けない。

人生にやり直しはない。

 

振り返れば、お世話になったクワハラを離れ、海外へ行くことは、それ相応の事だった。

しかし、桑原さんは止めるどころか、後押しまでしてくれた。

組織としては、慰留するべきところを、私を囲い込むことなく。

そうして、私は心置きなく海外で力を試すことが出来た。

そう大した結果は出せなかったのが残念ではあるが。

 

今でも、背中を押してくれた桑原さんや、2年間で良いから走れと言って私を走らせて頂いた

サンツアーと言う会社には感謝している。

その人たちの、優しさや、支えが有ったからこそ、選手時代の私があり、今の私がある。

だから私は、『やるだけやった、悔いが無い』、『最高の環境でやれた』と言い切る事ができる。

選手にとって…人間にとって一番悲しいのは、本人の望む選択が出来ずに、悔いが残る事。

 

だから選手には、その必要があれば、現状を変えることを恐れて欲しくない。

そして仮にも監督と呼ばれるようになった今、選手が強くなれる環境を作り、強くなってもらいたいし、

昔私がしてもらったように、より良き環境を求める選手には組織として囲い込むことなく、

頑張れよと、送り出してやりたい。