UCIグランフォンド世界選手権パース 後編

ゾロ目教って知ってます?

ゾロアスター教じゃなくて。

宗教っぽいけど、宗教じゃないやつ。

888とか1111とかに拘る指向の人を

茶化して言う言葉。

 まあ、誰だって多少はゲン担ぎをするし

なんだか気になる数字はあるもので

車のナンバーに42-19(死に行く)とかは

やっぱり嬉しくはないものだし、

ツールなんかでも海外で嫌われる13番のゼッケンなどは

逆さまにして、ウエアに取り付けられたりする。

 

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今回のパースで頂いたナンバーをじっと見て

焼肉屋の電話番号かよ!と心の中で突っ込みを入れた。

どうでもええんだけど(笑)

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さて、レースの方だが、前篇で書いた通りスタート地点への

並びが遅かったことで、ほぼ最後尾からのスタートに。

ここから先頭付近まで180人をパスしていかなくてはならない。

前半は平地の展開なのでじわっと上がればいいのだが、

このレースに限って言えば上は元プロレベル、下はホビーレベルの

混走なので、ホビーレベルの中切れと斜行による落車のリスクが

半端ない。

実際落車はあまりなかったのだけど、数少ない落車に今回一緒に参加した

そりさんが直前の落車に巻き込まれて、残りの100㎞を集団を追いかける

という苦しい展開を強いられている。

無事にレースを進めるためには可及的速やかに前に上がりリスクを

下げる事が不可欠となる。

 

今回のレースコースのプロフィールを紹介しておこう。

パースの市街地をスタートし高速道路を利用し、54Kmを平地基調で

移動し、アップダウンの周回コース(1周50㎞)を2周回る。

合計154Kmで獲得標高は2010Mと結構上る。

 

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このコースで行われたオーストラリアの予選会では、後半のアップダウンが

勝負所という予想を裏切り、前半の平地部分で速度が上がり、そこでの

分断が勝負を分けたそうだ。

そういうことを踏まえ、このレースの展開の事前予測は、平地の速度が

半端なく、高速道路セクションで中切れが発生し、そこで遅れると

その時点でレースが終わる可能性がある。。。だった。

 

が、現実は多少の上げ下げはあるものの、基本常識的なスピードで

進んでいき、一列棒状にならないため、問題なく徐々にポジションを上げて

自分として一番心地よいと思える、10-20番手ぐらいを定位置として高速道路

部分を無事消化していく。

 

過去にカナダとオーストラリアでステージレースを経験しているが、

身体の大きい選手の平地の引きの強さが半端なく、広い大地の一本道で

横風など吹こうものなら、軽量級の私などはひとたまりもなく、

中切れるというのが、いまでもトラウマになっているので、

鬼門の平坦セクションで脚を削られずに通過できるのは

地味にうれしく落車にだけ注意しながら、距離を消化していく。

 

平地セクションをこなすとアップダウンの周回路に入るのだが

その周回に入るジグザグと呼ばれる登りがレースのポイントの

一つだ。この登りは勾配はとても緩いのだが道が狭く、ジグザクの

名前の通り、完全なヘアピンカーブでコーナー通過時のラインは

最大でも2本程度で、このセクションを先頭付近で突入できない場合の、

集団の縦伸びや中切れのリスクが半端ない。

 

自分も相当意識してこのジグザグに挑んだが、流石にこの時点で

前を走っている選手は全員共通の認識を持っており、なかなか

前には出られない。おそらく30番手位の理想とは相当違うポジションで

登りに突っ込む。

 

先頭は好き放題走っているようで、後ろの隊列の伸びと、中千切れが

随所で起こる。中千切れを埋めながら、ちょっとした集団が緩む瞬間に

前に上がり、安全圏のポジションをキープする。必死の踏みだ。

実際ほかの選手に聞いたところ、ここでの進入で遅れて、中切れが

発生し、とうとう最後まで追いつかなかったらしいので、ここが

ポイントとなったのは間違いがない。

 

周回路に入って一つ、二つと登りをこなしていくと、平地系の選手は

周りから消え、180人の集団は40人程度に整理される。

この40人は完全に過去にプロやアマのトップレベルで競技をしていた

選手であることを、その走りから容易に想像する事が出来る。

走りのフォーム、他選手との距離感、ローテーションのこなし方、

レース中の放尿。特にフランス、イタリアあたりの欧州系の選手の

走り方がなかなかこなれているのを必死で走りながら感心する。

 

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(こんな感じであちこちで)

そのころになると、その集団からアタックをしたり、逃げたりしている

選手が少なからずいる、かなり脚にキテいる状態で張り付いている

自分とは脚が一枚違うのを感じていた。

前に何人か逃げていることは知っていたが、人数が正確には解らないし、

他カテゴリーの選手が前から落ちてくるため、逃げを吸収しているのか

関係ない選手なのか、完全な把握が出来ず、そのあたりはレースとして

捉えた場合、展開の妙味を味方につけることが出来ず少し不満だったな。

審判車、時間差のタイム表示があれば展開は違っているだろう。

 

レース時間が4時間を超えるので、ハンガーノックに陥らないように

意識してエネルギー補給に努める。前半は食べ慣れたカロリーメイト

後半はジェルを2本ほど。意識しないと空腹まで気が付かず、気が

付いた時には、時すでに遅しでは話にならないからだ。

 

ゴールまで後10km程度のところにある長い登りを超えた先に中切れ

ポイントのジグザグがある。ここを前で入ることは、出来るだけ脚を

使わないために、絶対条件。そう思いながら坂を上って行くが

よく似た風景と、酸欠と疲労から薄れる思考では入口をちゃんと把握

する事が出来ず、どうしようかときょろきょろしていると、同じ位置を

走っていたイタリア選手が、前に上がるので、本能的について行き

先頭付近に上がるとそのタイミングで登りの入口だ!

流石だなイタリアーノ。

 

ジグザグは入りが良かったので、無難にこなす。

このころになると、両脚のふくらはぎはぴくぴくと攣っているいるが

もう、無視するしかなく、攣っているのが普通の状態として走る。

ゴールへ向けたラスト数キロの上がり基調で時折かかるちょろ逃げも

なんとかチェックしゴールへ。

ゴールスプリントは嫌いでない。特に登りのスプリントは。

しかし、もう脚にキテるので、集団の頭を取るとかは全然

出来ないけど、とにかく順位を落とさないようにもがくだけ、

もがいてみるがグダグダのままゴール。

UCIグランフォンド パース 14位。

 

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先頭からのタイム差1:05秒、案外近い。

ああ、1:05秒か…

なんか違和感があるな。デジャヴ?

うーん?ニセコ!予選で走ったニセコ大会のタイム差と同じだ。

だから、どうってことないけど154Km走って、

同じタイム差とはね。ここに意味を感じるのは自分も実は

ゾロ目教なのかも。

 

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ゴール後、両足が攣り、まともに自転車が降りられない。

自転車を降り、近くのベンチに座りこむとなぜか涙。

ここのところの自転車競技の集大成として挑んだ大会だ。

競技をするのだから当たり前だが、自分なりにやれることを

やってきた。競技者が練習の苦痛を主張しても仕方がないが

苦しさの向こうにに、栄光を夢見ていたのは事実だ。

虹色のシャツが着たかった。

でも、現状あれ以上の走りは出来ない。到達感、無力感、

感動、喜び、絶望・・・色々な感情が溢れた。

 

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一緒に戦ったそりさんとゴール地点で

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同じサンボルトさんのウエアで戦った選手たち

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このウエアが欲しかった。。。

 

さて、来年はフランスのニースでの大会となるようだ。

移動距離の面で今回参加しなかった強豪がEUには沢山いるだろう。

来年コートダジュールのスタート地点に私はいるのだろうか・・・

明日は明日の風が吹くだろう。心の命ずるままに動くまでだ。

いずれにしても出場するのなら、アップは早い目に切り上げて、

スタート地点には早くいかねばなるまい。